A YEAR OF SPRINGS
三人の女性、3つのエピソード、3つの春
言いたいこと3行
- 優しい絵で感情と向き合うショートノベル
- ある意味で、ゲームという媒体を生かした作品
- ネタバレなしのノベルゲー記事はむずい。(配慮はした)
あとは買うだけだな!
Steamでキメていこう!(GO!)
https://store.steampowered.com/app/1688580/A_YEAR_OF_SPRINGS/
概要
この作品はノベルゲームだ。
主題としては、日本にいる3人の女性となり、それぞれを主人公とした3つのシナリオで構成されている。
ボリュームは控えめで、全部の文章を読むのに1時間程度だろう。
このノベルのキモは、主人公たちはそれぞれマイノリティな特性を持っており、
彼らの視点で選択肢を選び、物語を読み進めることである。
3つのエピソードとそのsteam公式紹介を貼り付けよう。
ゲームの詳細
このゲームのを紹介するにあたって、第1章「one night, hot springs」の話をする。
下記、ざっくり導入
主人公、鈴木ハルの場合は肉体的には男だが、精神は女性である。 ハルは親友の愛美から温泉旅行に誘われる。さらにエリカというハルの知らない女友達を連れてくるという。 愛美はハルの特性を理解しているが、エリカは初対面だ。 しかも温泉は性別の区分けに厳しい環境、ハルはこの温泉を楽しむことができるのか。。。
ここまで読むと、「ジェンダーとか興味ないなぁ。。。」と思う人もいるだろう。
確かにマイノリティーな特性を持つ主人公に対して、感情移入するのは難しいと感じるかもしれない。
しかし、この作品は主人公の受け答えを選択肢として突き付けてくるので、
プレイヤーとして必然的に向き合うことになる。
文章や映像と比較しても、比較的スムーズにハルの状況や心情を考えるように仕向けられる。
きっと、何も気にせずプレイできるだろう。
しかも、この作品の選択肢は少し考えさせられるものがある。
下の図は選択肢の一例だ。
この場面、ハルが性別を気にせずに済む家族風呂を利用しようとしたが、予約が埋まってたシーン。 確かに家族風呂を利用する理由はトランスジェンダーだ。 しかし、選択肢として提示されているのは、
予約が一杯だけど、それで諦めるか否かである。
選択肢にまで落とし込めばジェンダーも何も関係ない、よくある遠慮や迷いなのである。 このゲームは、こういったシーンにおいて、自分の心に従うか、遠慮して言動を控えるかといったものが多い。 この選択は読者らもよく経験するのではないだろうか。
そこにマイノリティは関係ない。 ただあるのは自己犠牲による痛々しさがあるが、一つのやさしさなのだ。 そんなやさしさがこの作品にはあふれているし、絵柄にも表れている。 それがこの作品が広く支持されている理由なのだろう。
1章のEDは全部で7種類ある。主人公が選択によってどうなるのか。 ノベルゲームとして純粋に楽しめるし、ぜひやってほしい作品だ。
ゲーム全体として
冒頭の画像にあったように、このゲームは3章あり、主人公は全員違う。 主人公が異なるので、選択肢の傾向もかなり変わってくる。
2章では初対面だったエリカが主人公で、時系列は温泉の後にハルと友人になった後の話だ。 この視点では、遠慮がちなハルの言動を受け止める立場として動くことになる。 ハルとはまた違った選択肢が魅力の章だが、個人的にはこの章は3章の布石にもなる。
最後の3章では親友、愛美が主人公だ。私が最も評価している章でもある。 2章で起こったハルとエリカのエピソードを受けて、愛美は自分に対してある疑問を抱く。 この疑問との向き合い方に、このゲームの表現が詰め込まれていて、私はのめりこんだ。 ガッツリネタバレになるのでここでは書かない。 愛美の自分に対しての疑問とは、そしてこの3人の終着点とは。 ぜひプレイしてほしい。
結論
安いから買っとけ 後悔はしないさ
読んでおきたい外部資料
メディアでこのゲームを2021年ベストゲームに選んだ人
https://jp.ign.com/goty-top-10-p-2021/57024/feature/2021goty-a-year-of-springs
ネタバレありで、細かく紹介している別ブログ
https://adpoppo-blog.com/a-year-of-springs/
以上。
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以下、ネタバレアリの感想記事
感想
3章の評価は記載の通り、私の中では非常に評価が高い。 評価できるのは下記の3点
①一般人の愛美を主人公とした話を最後にした構成
②愛美が向き合いたくない本心の表現
③全体の文章量とレベル合わせ
①構成
最後の構成が一般人で始まるが、途中で特性に気が付くというのは ここまで読んできたプレイヤーを少し不安にさせるのではないだろうか。 なぜならば、プレイヤーはここまで読んできて、確かに主人公たちと視点を同じとしてきたが、 どこかで「自分は違う」と思っていたのではないだろうか。 そこでこの話である。 しかし、特性なんてものは後天的なものもあるわけだし、正直誰が持っていてもおかしくはない。 そして1章や2章で、特性を持った人たちが自分らと何ら変わりない、魅力ある人間であることを示されている。 そういった意味で真に、プレイヤーを揺さぶり、問題に直視させつつも、 優しい気持ちにさせるのがこの章なのではないかと思う。 控えめに言って素晴らしい構成だと思う。
②表現
個人的に良い表現だと感じたのは、選択肢が塗りつぶされる部分だろう。 本人の葛藤がこれだけで表現できるのは素晴らしい。 主人公たちとの感情移入が進んだ状態でコレを出されるのは、結構効くのではないだろうか。 シンプルだが、すごく良い表現だと感じる。
③文章量
このゲーム全般に言えるがボリュームが非常に良い。 文章が長くなれば、主人公の心理描写が増えがちになるし、ストーリー全体が重くなってしまう。 しかし、このゲームの絵柄が示す通り、このゲームは終始登場キャラのやさしさで構成されている。 故に、作者が持っているメッセージ性などもこの作品には確かに含まれているが、 人々が許容できる量であり、ポジティブな作品として仕上げたことは称賛したい。
既に言及したが、選択肢の落とし込み方もよい。 これもプレイヤーが受け入れやすいレベルに調節されている。 こういった調整の数々がこのゲームの評価を不動のものにしているとも感じる。
短いノベルゲーは摂取しやすいのでいろんな意味でもこの作品は良かった。 独特な作品ではあるが、いろんな人に読んでみてほしいと感じた。